読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

w a k u r a b a

文芸メイン、その他もろもろ

猫を飼う

私はずっと怒っている。何に?自分に自分に自分に自分に。

Lの死は医療ミスだ。それを証明して訴えたいのにその修羅場に立つ勇気のない自分に。

それをしたからといってLは帰ってこない。

それをしたからといってLは喜ばない。

そう言って何もしない夫に、娘に、自分に怒っている。

もうすぐLの四十九日が来る。無宗教の私が四十九日だなんて笑える。

四十九日にはお経をあげてもらう事になっている。読経の最中に吹き出してしまわなければいいけれど。

見えないLに話しかけ、見えないLの気配と遊んでいた。見えないLは私にキスをして私の目を覚ました。こんな事を言うのも、もう止めなければ娘も夫もそのうちに怒り出すだろう。

長い間、夫と喧嘩をしていない。昔は朝まで口論し消耗した。喧嘩しても何も変わらなかった。これからも変わらないだろう。人は変わらない。人は変えられない。

私が諦めているだけなのに、向こうは私が納得したのだと思うのだろう。向こうも多分私の何かを諦めている。

夫が「猫を飼うか」と言いだした。

それで、抑えていた感情が爆発した。

いつもの気まぐれな成り行きかも知れないし、或いは私の気が紛れると思っての事かも知れないし私には解らない。

どうでもいい。

猫を飼えば、その猫はいつかまた死ぬのだ。

あなたはLが死ぬところを見ていないから、そんな事が言えるのだ。

私の剣幕に夫が怯んだ。

Lは死んで、私を自由にしてくれた。

猫が来れば、私はまた猫のいるこの家に縛られるのだろう。

そして、犬が死んだらどうしようという不安に加えて、猫の心配まで増えるのだ。

自分を解って貰えない絶望には慣れていたはずなのに、どうしてこんなに悲しく腹立たしいのだろう。

私が元気になれば、Lが喜ぶ?

私が猫を可愛がってLを忘れたら、Lは寂しいに決まっている。

そもそもLは死んで、もういないのだから喜ぶも悲しむも無いと娘が言う。

 

 

猫は飼いません。