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犬なんか飼わないほうがいい話⑥

私達は、今でも時々ペットショップに行く。

ドッグフードやトイレシーツ等の消耗品を買うためでもあるが、時間があればケージの仔犬仔猫を眺めたりする。

いろいろな事を思うと複雑ではあるが、小さな仔はやっぱり可愛い。これは本能だから仕方ない。

眺めているとショップの店員がすかさず寄ってきて、必ずといっていいほど

「気に入った子はいましたか?良かったら抱っこしてみませんか?」と言う。

「もう飼っていますので」と言えば「じゃあ、2匹目を是非」等とお気楽な事を言うので

「うち3匹いるんです。」と言えば「わぁ大変!お好きなんですね。じゃあ4匹目を」と言う。

そんな阿呆みたいなやり取りの横では、女子達が店員に促されるまま仔犬を抱っこしている。

皆、愛くるしい仔犬にメロメロになって「チョー可愛いんですけど〜」「あったか〜い!フワフワ〜!」と騒いでいる。

うんうん可愛いよね。

でもやめたほうがいいよ。ぬいぐるみで十分フワフワだよ。

 

そう心の中で言う私。

 

毎日の散歩が大変だよ。

預け先がないと、旅行も出来ないよ。

洋服が毛まみれになるよ。

お気に入りの靴をカジカジするよ。

ブランドのバッグにもおしっこするよ。

絶対に後悔するから。

嘘じゃないよ。

 

私はうちの犬が3匹になった頃から、仕事と家庭の悩みで鬱状態になっていた。

毎週末に出かけていたドッグスポーツイベントにも、オフ会にも出られないほど人と会うのが苦痛になった。

夫の方は、犬を飼ったのがきっかけで保護犬や地域猫問題にまで首をつっこんで活動の幅を広げている。

そして私達は、捨て犬がものすごく多いという現実を知る事になる。

うちが捨て犬を飼う羽目になる少し前にも、捨て犬がいた。

その犬は全身真っ黒に汚れていて、最初は何犬だか判らなかったが、よく洗ったら真っ白いマルチーズだった。

夫の友人宅には3匹の中型犬がいたのだが、娘さんがこのマルチーズを大変気に入ったので仕方なく4匹目を迎える事にしたのだ。

どこかで犬が保護されると連絡網が回ってきて、夫は引き取り先捜しに奔走する。

捨て犬の犬種が判れば、同じ犬種を飼っている知り合いに一時保護を頼んだりしている。そうしなければ即保護センター行き、そして殺処分になってしまうからだ。

しかし、善意だけではとても追いつかない数の犬が捨てられている。

これらの犬は、一生飼う覚悟もないままに

「チョー可愛い~」と買ってしまった犬なのではないだろうか?

そして、すぐに飽きられ捨てられる。

 

 

私が犬なんか飼わないほうがいい話を書こうと思いついたのは

「おい!犬が吐いているぞ!」

と慌てる夫の声で目覚めた朝だ。

更年期特有の体温調節機能がおかしなせいで、私の布団はまだ夏布団のままだった。でも、今日こそ冬布団に替えようと思っていた。

その夏布団の上で、雄犬がゲロを吐いている。見るとその吐瀉物は昨夜食べたフードだった。

雄犬はいろいろと素行の悪い犬なのだが、吐く時は何故かいつもトイレシーツの上で吐く。それなのに、布団の上とは…

気持ち悪いのが我慢できなかったんだねぇと心配になる。と同時に、これでお前の取り柄はひとつも無くなったな!と思う。

そして、これが今日洗濯する予定の夏布団だったから、そんな呑気な事も言っていられるのだ。

もしも取り替えたばかりの冬布団だったなら、私のダメージは計り知れない。

冬布団は家では洗えない。布団丸洗いは1枚4,000円する。それを我が家はもう何度頼んだか解らない。布団も何枚捨てただろう。

犬は可愛い。癒される。でもそれ以上に私を疲れさせる。

犬を飼いたい人に言いたい。

犬を飼うという事は、散歩、えさ、うんこ、おしっこ、そしてゲロの日々だ。

そして、先月には初めて、ノミが大発生するという惨事に見舞われた。

ノミ退治には1か月かかり、ノイローゼになりそうだった。

定期的に駆除薬をつけていれば、ノミはつかない。

けれども3匹のうち里子犬が、この薬の副作用が酷かった。

メーカーに電話してその旨を話すと「今までにそのような報告例はありません」と言われたが

この電話は報告例ではないのか?と疑問に思った。

それで使うのを止めていたのだ。

 

うちの犬がうるさいと、ご近所トラブルも発生した。先日やっと和解したが、5か月間これも悩みの種であった。

洋服には必ず犬の毛がつき、おかずには犬の毛が入っている。いくら気を付けていても。

床に置いたもの、新しく家に来たものにはもれなくおしっこの洗礼を受ける。

コンセントコードを噛みちぎる。ちょっと置いておいた野菜もかじる。

テーブルに飛び乗って食卓を荒らす。

ほっと一息したくてミルクティーを淹れ、席を一瞬立つともう半分飲まれている。

未開封のドッグフードを一袋全部食われていたとか、生のお米を半袋食われていたとか

犬飼いが集まればそれぞれの犬のやらかし披露が始まり大笑いするが、犬は必ずお腹を下し、その始末が大変なのだから笑い事ではない。

有り得ないものを飲んで開腹手術、という話もよく聞く話であった。

 

確かにうちの犬は躾が悪い。犬が悪いのではなく飼い主が全て悪い。

こんなはずではなかったと思っても、後の祭りである。

だからと言って、犬を捨てるなんて出来ない。

犬は玩具ではない。捨ててはいけない。

 

でも、私はそんなご立派な事を言える人間ではないのだった。