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文芸メイン、その他もろもろ

犬なんか飼わないほうがいい話①

私の周りには、子供が親離れをして心にぽっかり穴が開いたようになったり

親の介護に身も心も疲れ果てていたり

病気を抱えて不安に苛まれていたり

夫には他所に女がいるのではないかという妄想に取り憑かれていたり

そんな人達がとても多い。

つまりは、そういう年代である。

話をすれば、そんな話題ばかりである。

かなりゲンナリする。

そして、よくこう言われる。

 

タンポポの家には、犬がいるのよね。いいね。可愛いんでしょう?

私も犬を飼おうかな…」

 

うん。それはいいと思う。

犬は、子供のように可愛くて、子供のようにグレたり金をせびったりしない。

浮気もしない。

仕草を見ているだけで癒される。

自分を必要としてくれる。

澄んだ瞳で真っ直ぐに自分だけを見つめてくれる。

抱くと温かい。モフモフの手触り。

私が元気がないと、そっと側に寄り添ってくれる。

泣けば、涙を舐めてくれる(たぶん)

虚しい毎日の生活に、彩りとメリハリを与えてくれる。

犬はいいよ〜。犬を飼いなさい。

 

とは言わない。

 

 

娘は、物ごころつく頃から動物が大好きだった。

人間のお人形よりも動物の縫いぐるみばかりを欲しがった。

どこに行こうかと聞けば、TDLよりも動物園と言い、家の中にはお土産に買った動物の縫いぐるみが溢れていた。

そして、いつも「動物を飼いたい」と言っていた。

「将来は獣医になる」とも言った。

でも、賃貸マンションの規約で、動物を飼うことは叶わなかった。

郊外に行けば、有料で犬や猫を触ったり、散歩をさせてくれる施設がいくつもあって

我が家はよくそういった場所に出かけた。

そこにいる間の娘は本当に楽しそうで、幸せそうであった。

けれども、帰る頃になると途端に不機嫌になり、帰る帰らないで必ず喧嘩になり

私は怒り、娘は泣いてふて腐れ、夫はウンザリして二度と来るまいと思うのだった。

そんな事を何度も繰り返していた。

娘は中学を越境入学した。

教育環境を変えるのが目的であったのに、その地域は裕福な家が多いこともあり同級生が皆、持ち家で犬や猫を飼っている。

それを知って、また娘がやさぐれた。

「親に甲斐性がないから、犬も飼えなくて悪かったな」と、夫もやさぐれた。

本当は、夫も犬が大好きなのだ。

 

夫の実家に行くと、いつも犬がいた。

行くたびに、犬が変わっていた。どうやら義母がどこかの事情があって飼えなくなった犬を引き取っていたらしい。

大抵、高齢犬で毛並みの悪い小型犬であった。何年もしないうちに犬は亡くなり、また別の犬が来る。

犬を連れてくる義母を、義父は「全く…困ったものだ」と言いつつも黙認していた。

私達が結婚した2年後に義母は急逝したので、義父は義母がまたどこからか連れてきた年老いたマルチーズと暮らしていた。

私は猫派だが犬も嫌いではない。けれども老いて毛の色も瞳も変色し、加齢臭のあるマルチーズを可愛いとは思えなかった。

しかも義父は、自分が咀嚼した肉や魚をマルチーズに与えた。それは見ていて気持ちが悪かったし、第一、犬の健康にも良くないことであったから止めるように義父に言った。

でも、義父は改めるどころか「これが愛情というものだ」と言い張って聞かなかった。そして私にも同じようにして犬にあげろと言ったが、私は頑としてやらなかった。

そして、その頃まだ子供がいなかったが

(この人に子供を預けるわけにはいかない)

と強く思った。きっと、この人の愛情で、子供に何かを食べさせるだろうから。

マルチーズは間もなく老衰で亡くなった。

義父が仕事から帰って来たら、もう冷たくなっていたそうだ。

仕事人間の義父は、あまり家庭を顧みない人だった。その義父が、短期間に義母を亡くし、犬にも逝かれ、「もう生き物は懲り懲りだ」と、涙を滲ませた。

娘が犬を熱烈に飼いたがっているのを知ると、

「犬は可愛いがのう。死んだ時にはとても辛いけんのう」と娘に言い聞かせていたが、娘にも私達にもその言葉は響かなかった。

 

疲れたので続く(笑)